古本屋開業奮闘記

07.5.24
新しい日付のものが先頭に来ています  ネットの古本屋へ      ブログの古本屋フェミナ・フェムへ

 私も年齢を重ねてきた。人は、年を取ると穏やかで丸くなる人も多いようだが、私は人嫌いの母に似たのか、人と付き合うよりもパソコンと格闘しているほうが楽しくなってきた。目も、首も、肩も痛いのだけれど。
 
 古本屋さんは、泣かず飛ばずではあるが続いている。そんなに売れるものではないが、兎に角楽しい。安く背取って来た本が高値をつけているのをみると、売れたわけでもないのにキャッホーと言ってしまう。
 そして、「ねぇ、やっぱりねぇ、こういう本が売れるのよ、アマゾンでは!」と独りごちてみる。めったに高値が付くことはなくて、無駄本買いも多く、部屋中が本で溢れかえっている。それでも、自分の好みの本を買ってしまう。

 この頃、どういう本が高値かが、少しわかってきた。世の中に大量に出回っているベストセラー本は、大体がアマゾンでは1円で出ていることが多いのだ。
 古書店「M書房」のKさんが、首を振りながら、「もう俺にはわけわからん」と嘆く。三島由紀夫の初版本より、茂木健一郎の新刊本「感動する脳」などのほうが、アマゾンでは高値で売れるとわかったときのことである。いや、超新刊本が売れるだけなのだが。
 アマゾンは、需要が高いと高値で、供給が多いと超安値という経済原則を地でいっているのである。本の良さなどで値が付いているのではないのだから。

2004
年に開業した「ネット古本屋フェミナ・フェム」のその後です。

 

07.11.5 月曜日

大量の精神・福祉・心理関係の本が、M書房から届いた。なるほど、その筋の本ばかりである。「行動療法」・「認知療法」から、「自閉症」関係「ようこそダウン症の赤ちゃん」まで、精神障害関係の本ばかりがズラリと揃っている。何をする人がこういう関係の本を集められたのか知りたいところだけど、詮索はすまい。

早速、世の中では、いくら位の値が付いているものか、調べてみる。この時が一番楽しいのである。品切れ本も何冊かある。品切れ本は、強気で値をつけても、売れることが多い。十何万もの値を付ける人がいるが、私は、しっかり相場を調べてから、値を付けることにしている。手間はかかるが、それが、信用にもつながることだと思うから。ネットは、機械相手だと思いがちだが、画面の向こう側には、人間が蠢いているのが、感じられる。結局操作をしているのは、人間の手であり、頭なのだもんね。

しばらくは、この本と格闘することになりそうだ。楽しい格闘だ。

07.10.16 火曜日
 M書房Kさんの得意分野は、歴史ものである。江戸の○○などという本が入ると、狂喜する。こういう本を古書っていうんだよ、と長々と講釈をされる。私の扱っている心理学や女性学は、こういうのは、古書っていわないと言いながら、これまでは全部100円コーナー行きであった。しかし、こういう本も高値が付くと分かってからは、「高価買入れ」で古本の引取りに行った時に、私好みの本も、もって来るようになられた。今までは、どうしていたんですか、こういう類の本が、引取り要請があったときは、と聞くと、「いやー、ゴミにもお金がかかるので」と断っていたというのだ。もったいなーい!

 昨日も、「古本屋は知的仕事だと思っていたけど、なんのなんの肉体労働だ」とぼやいておられたので、どうしたんですかときいたら、福祉関係の本が大量に出て、私が喜ぶと思って引取ってきたよ、とおっしゃるのである。なんと、心理・福祉・障害者関係が、200冊余も積み上げてあった。2階から降ろしたんだそうな。大体14〜5冊を一括りにするので、14個ほどある。「こういう類の本」以外もあったようなので、大変だったらしい。

 狭いのに、置く所がないないと、ぼやくことしきり。
 そして、一括して私に買わないかというのである。配達もするからと。
 
 さぁ、これだけ大量にある福祉関係をどうするか

07.10.10
水曜日
 今日は、インターネットで古本の供給と需要を調べながら、M書房の店番をやる日だった。古本屋さんって、様々な人がやってくる。粛々とやってきて、各々が、夫々のものを静かに見つけて買っていく。皆、面白そうなものをみつけて、レジに持ってくる。エーっ、こんな面白そうな本があったのかと、びっくり、隣の芝生はきれい、なのだ。

 社長のKさんが、今日は変なことがあったという。AVビデオは18歳以下に売ってはいけない。しかし、日本では、酒やタバコを買うのに、身分証の提示を求められることは、まず無い。AVビデオもしかり、である。
 ある人がやってきて、自分の甥っ子にAVビデオを売ったろうと言ったらしい。甥っ子はまだ、中学生なのだという。この店は、法に触れたことをしたと言う。そして・・・、「それって、ゆすりっていうのではないですか」と私は叫んだのでした。
古本屋には、様々な人が来るのです。

07.10.6
 土曜日
 M書房は、4店舗もあったことがわかった。しかし、ご他聞に漏れず、他の古本屋さんと同じく、売り上げは伸び悩んでいたらしい。1店舗閉じ、2店舗閉じして、結局2店舗を維持しているところである。それも、AVビデオの売り上げがかなりのものになっている。
 アマゾンにもAVものを出すコーナーもある。Kさんは、AVを売るほうが効率がよいから、こういうのも扱おうよーとおっしゃるが、「私が何の仕事をしているかご存知でしょ」というと、「そうだよなぁ、フェミナ・フェムでは、無理だよなぁ」と。大体、女性性を売り物にすること自体が私の性に会わないのだ、と、例の如くわめく。

07.5.28
 私の知っている限りにおいて、アマゾンが図抜けて本の在庫が多い。日本の古書店、スーパー源氏などの古本屋さんの集まりのなかで、突出している。
 しかし、売れる本の種類は違うように思われる。

07.5.27
 アメリカの一主婦が始めたという本のネット販売網「アマゾン」は、全国各地の本を売りたいと思っている人から、本を集め、本を欲しいと思っている人へ橋渡しをして、利益を得ているところであるらしい。 アマゾンには、店頭販売もある古本屋さんから、ネット上だけの古本屋までが、自分の持っている本に自分で値段をつけて競って出品しているから、あらゆる本がある。
 が、しかし、アマゾンの画面上に現れていない本は、出品することができない。あまりに古い本や、マイナーな本は、画面上に無い場合が多い。そういうのは、アマゾンでは売ることが出来ない。そういう本も売りたいがどうすればよいかと、メールで質問してみたら、基本的にPC上に載っていない本は、出品できませんとのお答えを頂いた。例えば「滑稽新聞弐号」というのを出品したくても、画面に六号しかなければ、出品できないのである。購入する人は6号だと思って買うので、本違いということになる。
 アマゾンでは、代金は、購入者の支払い方法(カードや口座引落しなど)が前もって登録されており、本の購入するをクリックされると、自動的に?代金が引落とされるらしく、その引落しが完了しない限り、本の発送はしないので、絶対に代金を踏み倒される心配はない。
 しかし、代金がすぐに引かれるので、当該希望の本がなかったときは、代金の返金や、別の本を送付した時は、返品、代金返済といささか煩わしい。
 そして、手数料は本が売れた時に発生し、古本屋から手数料を払うという仕組みである。手数料もばかにならないぐらいではあるし、購入者も送料と手数料を支払わなければならない。
 しかし、兎に角、アマゾンの本の数と種類の多さは、他の追随を許さない。
 
07.5.24
 父から4〜5回に分けて送られてきた本の整理がやっとついた。
 私は、うちはチョー貧乏だと思って育った。欲しいものなど買ってもらったことなどなかったし。自転車欲しかったなぁ。貧乏の最たるものが、弟が控えているので、大学は地元の公立しかやれないといわれた時、だって、弟は男だから大学にはやってやらなきゃというのである。女性であるあんたは、そこらへんのいける大学に行け、というのである。結局、弟は、しょうもない私立の大学を中退したけれど。

 私は、還暦を過ぎるまで、食うために、子どもを育てあげるために、必死で働いた。それは、否応ないことであって、好きな仕事だからやるなんて発想はなかった。やらねばならないからやっていたわけで、好きだからやっていたわけではなかった。友人や知人が声をかけてくれる仕事は断らずに受けてきた。
 しかし、今頃になって、「背取り」という楽しみを見つけ出したのである。とても楽しい。毎日が充実している。少々だがお金も入る。好きなことをしてお金も入って・・、こんなに良いことはない。

 あ、そうだ、貧乏の話。
 ネット上で古本屋を始めたと電話で母に言ったところ、90歳すぎの父から、本が送られてきた。自分の本を大事にして、他人にも貸さないようにしてきた父が、そっちに送ったやつは、売ってよい、というのである。「うろつき夜太」など、古書としても値のはるのや、古い初版本が入っている。
 本と名の付くものは、価値があろうと無かろうと一切捨てない父で、実家には根太が落ちるほどの本がある。文藝春秋の創刊号からあるというのが、父の自慢で週刊新潮までもとってあるくらい。
 その本に関してはけちだった父が、後は自分で来て選んで持っていけ、というのである。父が年取って欲がなくなったのかなぁ。私も年取ったし。
 私は、この年になって「父の蔵書を売る」ということをするのである。
 これって、うちって貧乏だったんだろうか?

07.5.23
M書房さんのこと
 5月の連休のときに、行きつけの古本屋さんへ背取りに行った。鉄道の線路脇にあり、ごちゃごちゃと店が並んでいる一角にある古い古本屋さんである。行き始めてから10年以上にはなる。開発が遅れていて幸いであると私は思うのだが、4月末に、そのマーケット群の一部が火事になっていた。魚屋や洋品店が全焼して、2〜3軒先まで焼け落ちていた。
 焼けなくて良かったですねぇ、と立ち話をした。そこでそんな風に世間話をしたのは、初めてであった。
 そして、私がネットで古本やをしている話になったのである。女性学と心理の本をメインにしていることも伝えると、「どおりで、変な本を買っていく人だと思っていた。あれは背取りだったんだぁ」と、大将は言った。でも、「あんな本が売れるんかぁ」、「古書とは言わないぞー」とも。
 私も、そこの店の名前がM書房で、大将の名前がKさんで、店がもう1軒あることなどをはじめて知った。

 Kさんは、店頭売りだけでは限界があることを考えていたらしい。私もわかる。各地の大きな古本屋が店じまいをしている。
 で、アマゾンのシステムを教えてあげた。売れたら手数料を払う仕組み、購入者からも送料他として、本の代金のほかに支払いがあること、代金の取りはぐれは、絶対にないことなど、など。
 そうしたら、「コラボレイトしなきゃなぁ」といって、物置に突っ込んであった絵本を20冊ほど、預けてくれた。M書房では、絵本までは手がまわらないようである。